子宮頸部異形成の治療・手術について
「異形成」は「がん」ではないので、急いで治療を行うことは少なく、経過や状態、感染しているHPV(ヒトパピローマウイルス)型などをみて総合的に判断されます。
軽度異形成の治療
子宮頸部「軽度異形成」は90~95%程度が自然治癒するため、治療は行いません。
2~3ヶ月に一度、細胞診(又はコルポ診、組織診)を行いながら経過を診るのが通常です。
子宮頸部異形成「検査の種類と分類」結果表の見方参考:異形成で受ける検査の種類
異形成は、免疫力・抵抗力を高めることでHPVを自然排除し、その結果、異形成も治る=自然治癒 することが知られています。
むやみに不安に陥らずに規則正しい生活や無喫煙、適度な運動、バランスの良い食事、そしてストレスをなるべく溜めずに解消できる生活環境を整えつつ定期検査を受けることが大切です。
異形成の【自然治癒・再発予防】免疫力を高める暮らし・食べもの・飲みものまとめ参考:異形成の自然治癒を目指す!免疫力を上げるための暮らし方
中等度異形成の治療
「中等度異形成」の場合は、軽度・高度、どちら寄りの異形成なのか?や、感染しているヒトパピローマウイルス(HPV)型、これまでの経過や状態を考慮して判断されます。
多くは軽度異形成同様に経過を診て、必要ならば治療を行います。
高度異形成・子宮頸がん0期の治療法
「高度異形成」の場合、上皮内がん(0期の子宮頚がん)を含んでいることもあるので予防(治療)や病理診断のために手術を勧められることがあります。
高度異形成、子宮頚癌0期では子宮摘出は不必要で、将来妊娠・出産を行うことができます。従って早期発見がとても大切。
又、子宮頚がん1a期までは、将来出産を望む場合や子宮温存したい場合に子宮を残す事が可能ですが、検査結果データ内容や医師の判断により残せない場合もあるようです。
(詳しくは『子宮頸がんについて』をお読みください)
子宮頸部高度異形成からは、治療を行う場合もあります。治療法は、その病院の設備や患者の経過や病状、医師の技量などにより選択されます。
納得いく治療法を勧められた場合、他の病院をセカンドオピニオンしてみることもおすすめ。
円錐切除術とは:病巣を円錐状に切り取る方法
現在、日本で広く行われている治療法の1つが円錐切除術(えんすいせつじょじゅつ)。
「円錐切除術」とは、精密検査(コルポ診、組織診)で見つかった子宮頸部の異常部分を円錐状に切除する方法です。
高度異形成や頸がんの初期(0期、上皮内がん)で病変が浅い場合や、1a1期の初期がんで子宮温存を希望される場合に適応となります。メス、電気メス、レーザーメス等、使用する器具により日帰り~1週間程度と、入院日数に差があります。
従来のように膣からメスを使用する方法もありますが、現在ではレーザーや高周波の電気メスで円錐切除を行う病院も多くなっています。
高熱で凝固しながら組織を焼き切るので出血も少なく、麻酔を使用して行います。
日帰りや、1~2泊で退院できます。
費用も安く済み、通常妊娠・出産も問題なくできます。
円錐切除術、妊娠出産へのリスク
子宮頸部(しきゅうけいぶ)は子宮の入り口にあり、妊娠時には胎児が落ちてしまわないように守っています。
「円錐切除術」を受けると、子宮頸部が通常より短くなるので、妊娠した際に胎児を守りきれず流産の確率が上がる、とよく耳にします。
この件について、私が手術をお願いした主治医に確認してみました。
婦人科医:「産科の先生は何も知らないからねー。どの程度切除するのかも知らずに、子宮頸部全部を切り取る手術だと思っている産科の医師が多いですよ。」
切除するのは一部ですし、しばらくすれば元に戻る程度だそうです。もともと子宮頸部が短い人もいるので、こちらから言わなければ気が付かない産科医師が多いそうです。
妊娠中に子宮頚管をしばる処置は必要?
円錐切除術を受けた後に妊娠された女性が、別の産科で円錐切除術を受けたことを告げたがために、子宮頸部を縛って胎児が落ちないように子宮頚管をしばる処置を行いました。
しかし、悲しいことに・・その影響(胎児にかかるストレスなど)で、逆に流産してしまわれたそうです。
私の主治医は、「年間120例程円錐切除術を行うが、その後妊娠して流産された女性は彼女1人だ」と仰っていました。もちろん主治医への報告がない場合は分かりませんが、通常、術後も定期的な検査を受けるのだから全体数が少ないわけではないと思います。
このことが影響しているのかは分かりませんが「もし妊娠したらその辺をきちんと理解している産科医を紹介します」と言っていました。
【追記:2010/10/22】
当サイト管理人@sarryは、円錐切除術による高度異型成治療から3年後の、2009年2月に自然妊娠が判明し、ごく普通の妊娠生活を送り、同年10月に自然分娩で第一子を出産しました。その後、第二子も自然妊娠+自然分娩で出産しています。
妊娠発覚~出産までの様子を『円錐切除術後の妊娠と出産』にまとめましたので、円錐切除術後の自然妊娠~出産の1つの例として、多くの方の支えになれると幸いです。
異形成の手術後の性交渉はいつからできる?
異形成の治療・手術を受けた場合は治療法にもよりますが、円錐切除術の場合、傷口が開かないために術後1ヶ月程度は性交渉は禁止です。
【体験談】円錐切除術後の初エッチ
円錐切除術を受けた女性が経験者に聞いてみたいと思っているであろう、術後の初エッチについて記載しておきます。
円錐切除術後1ヶ月から性交渉を行えるそうです。
私も主治医に確認するのを忘れていたのですが、「いつ妊娠しても良いですよ」と主治医に言われたので、イコール性交渉OKなんだな、と理解しました。他の経験者様サイトを拝見しても1ヶ月後~という情報が多いですね。
出血(といっても術後1週間からはナプキンにちょっと付く程度。術後1週間は生理2日目が最大量だとすると半分くらいの量でした)が止まったこともあり、円錐切除術から5週間後におそるおそる性交渉を行いました。
が、性交渉後に出血し(鮮血)、また1週間程出血が少量続きました。
術後初エッチからさらに2週間後からは普通に性交渉を持っても出血することはありませんでしたが、この時期くらいまで右側下腹部の引きつり感のような違和感はありました。
*引きつり感はその後消えました。
この辺は、傷口の治り方など個人差もあることなので、主治医の許可を取ってからの方が安心です!
円錐切除術の副作用:濡れにくくなる?
もちろん術後しばらくは怖いですよね・・、、HPV再感染も怖いですが、そもそもsexが怖くなることも。。これはもう気持ちが落ち着くまで待ってもらうしかありません。ローションやゼリーを使うのも有効。
その他、円錐切除術に関する質問は別ページに詳しくまとめています。
レーザー治療(レーザー蒸散術)
レーザー光線を用いて病変部を焼き、蒸散する方法です。
レーザー治療の場合、病変がコルポスコープ拡大鏡で見える場所にある場合に限ります。見えない部分の病変には適応できません。
また、術後の病理検査の為の組織が残らないので術後診断ができません。
LEEP法(ループほう)
ループ状の細い電気伝導性ワイヤーを用いて子宮頸部の病変領域(異形成やがん)を取り去る治療法。
通常、部分麻酔下でコルポスコピー補助のもとに行います。副障害として、術中術後の大量出血が1~4%の患者で起きることが報告されています。
LEEP法の効果は、91~98%で病変が消失すると報告されています。
LEEP法は簡便な外科手術ですが、病理診断のための組織を摘出できるので組織診断によって病変の残存の有無や潜在する浸潤の有無を検出することが可能で優れているとされています。
高周波療法(こうしゅうはりょうほう)
高周波を用いて電磁波の熱で、がん細胞(異型細胞)を殺します。
光線力学的療法(PDT)治療
行っている病院は日本全国でもあまり多くないようですが、体にメスを入れることなく行える治療法の1つです。
癌細胞に多く集まり、レーザー光に反応する性質を持つ薬(フォトフリン)を静脈に注射しレーザー光を照射することによって薬を取り込んだ癌細胞(異型細胞)を死滅させます。
体にメスを入れることなく麻酔の必要もない治療法ですが、治療後の生活への負担が大きいのがデメリットです。
治療の際に使用する薬(フォトフリン)の副作用で日光過敏の症状が起きるため遮光生活が必須となり、治療直後の真っ暗な状態から徐々に照度を上げていくために約3週間の入院が必要です。
又、退院後も当分の間(~半年程度)は光を避ける生活になります
凍結療法(とうけつりょうほう)
がん細胞(異型細胞)を凍らせて殺します。
凍結療法は子宮頸部をCO2やN20などの液体冷却剤(液体窒素)で凍結することにより子宮頸部異形成病巣を破壊する治療法。
麻酔が不要で、費用負担も少なく外来で処置可能な療法です。
専用器具(お椀のようなもの)で病変を完全に覆うように子宮頸部に接触させ、4~5mmの凍結層を形成させます。凍結時間は3分間を1回に行う方法と、3分間を2回計6分間行うやり方があります。
凍結療法による合併症は少なく、その効果として86~95%で病変が消失すると報告されています。
凍結療法の欠点は、組織を直接破壊するため組織検体の採取が不可能で、残存病変の有無(病変が残っていないか?)や浸潤病変が潜在していないかなどをすぐには判定できないことです。
海外では広く行われているようですが、日本ではまだあまり行われていないようです。
どの治療法を選択するか?
2008年に、日本で広く行われているのは円錐切除術、レーザー蒸散術、LEEP法などです。2019年も変わっていません。
円錐切除術の場合、通常のメスで行うのか?レーザー・電気メスを使用するのか?などで術後の出血量や傷口がくっつく時間の長短に差があるために入院日数が日帰り~1・2週間とかなり違いがあります。
治療を勧められた場合に医師が説明してくれる方法はもちろん個人の状態も考慮されますが、多くの場合その病院で受けることができる治療法のことがあります。
「当院ではこの治療法を行いますが他にはこういう治療法もあります。」と治療法全てを説明してくれる医師は少ないかもしれません。
従って、1人の医師の言葉だけではなく個人で情報収集などを行い、他にどんな治療法があるのか?各治療法のメリット・デメリットやあなたの状態を考慮して納得いく治療法を選択して欲しいと思います。
管理人@sarry(さりぃ)