子宮頸がんの前がん病変である【子宮頸部異形成】に関する情報交流サイト

「出会えてよかった!」先進医療技術を選んだ患者さんたちのエッセー集に寄稿しました

患者さん・ご家族のための闘病体験共有サイト「ライフパレット」を運営する株式会社メディエイドより、子宮頸がんの闘病体験エッセイの依頼を受け、寄稿しました。

経緯としましては、弊社が患者さんの声を届ける活動などをする上での、クライアントであります、日本べクトン・ディッキンソン(子宮頸がんの検査機器などを持つ医療機器メーカーになります)の協力団体である在日米国商工会議所(ACCJ)医療機器・IVD小委員会から、どなたか子宮頸がんの闘病体験を元にエッセイ(1回のみ1編600字程度)を書ける方がいないか、と打診を受けたことがはじまりです。ーメディエイド社 担当者からの依頼メールよりー

こちらの冊子「出会えてよかった!」は一般発売はされていません。当サイト「子宮頸がんと異形成」ご利用の皆様にもお読みいただけるよう、下記に載せておきます。

「出会えてよかった!」先進医療技術を選んだ患者さんたちのエッセー集

監修:桜井 靖久(東京女子医科大学 名誉教授)

がん早期発見は検査のおかげ

婦人科を受診したとき、「一度子宮がん検診を受けてみてはいかがですか。痛みもなく、一瞬で終わりますよ」と医師に勧められたのをチャンスに、検査を体験してみることにしました。受けてみると医師の説明通り、いつ検査が始まったのか分からないうちに、終わっていました。

こうして気軽に受けた検診でしたが、「子宮頸部細胞診の結果がⅢaなので、再検査が必要です」と医師に告げられたときは、大変驚きました。何の症状もなく、違和感なども全くなかったからです。「まさか」という気持ちで、再度、同じ検査を受けたのですが、やはり結果は「Ⅲa」でした。いわば一種の“疑陽性”ですから、この疑いを晴らすためには、精密検査を受けるしかありません。

細胞診からウイルス判定まで

紹介された病院でコルポ診・組織診などの精密検査を受けた結果、「高度な異形成あり」でした。これは子宮頸がんの“前がん状態”なのだそうです。それから2カ月ごとに精密検査を受ける暮らしが始まりました。検査の結果は、毎回検査の1週間後に聞きに行く形でしたが、その度に、がんに進行していると言われるのではないかという不安で一杯でした。

この精密検査を3回受け、その都度、結果は変わらなかったため、治療を受けることを勧められたのです。しかし、その病院では、治療方法として子宮全摘出術しか行えず、医師に「当院では行っていないけれど、円錐切除術(えんすいせつじょじゅつ)という異形成の部分のみを摘出する手術があるので、検討してみてはいかがですか」と、またしても転院を勧められました。

転院先を検討している間に「ヒトパピローマウイルスDNA型判定検査」という検査方法のことを知ったのです。この比較的新しい検査を行っている病院を絞り込んだ結果、主治医である清水先生にお会いすることになったのです。

別の病院で「高度異形成」と診断されたこと、2カ月前に、この病院の別の先生に「子宮頸部の細胞診で正常」と言われたことなどを話しました。すると清水先生は、「まず子宮や卵巣の状態を見ておきましょう」と膣部からのエコー検査してくれたあと、再度の細胞診、コルポ診・組織診へと進みました。

さらに、この病院で力を入れているという私が希望していた「ヒトパピローマウイルスDNA型判定検査」を受けました。この検査の結果で、ヒトパピローマウイルス51型に感染していることが判明しました。

約3カ月が経過したころ、清水先生に「円錐切除術を受けた方がよい」と言われました。定期検査の負担や、がんの進行に対する不安から解放されるのであれば、取ってもらえばいいのではないか。そこでお勧めに従って、清水先生の執刀で円錐切除術を受ける決心を固めました。

しかし、手術日が近づくにつれて、何だか気持ちが落ち着かなくなり、手術の3日前からは、いつものような心地よい寝入りが味わえず、前夜はほとんど眠れませんでした。全身麻酔で手術を行うということに不安があったのだと思います。

手術当日は朝食を抜き、午前9時に入院手続きをすませ、10時から行われる手術に備えて個室で待機しました。看護師の説明を聞いたり、体温や血圧を測ったりして準備が着々と進み、「最後に食事と水分を取ったのは、いつですか?」などという質問に答え、不安の中で手術着に着替えて手術室まで歩いて行きました。

出血も少なく日帰りも可能

手術室では看護師2人と麻酔科医1人が待っており、私は指示に従って手術台に上がり、手術中に両手両足を勝手に動かさないように固定されました。さらに腕や胸などに点滴や心電計もつけられました。

緊張している素振りが見えたのか、後から入って来た清水先生は「手術は20分ほどで終わりますからね」と笑顔を見せてくれ、「不正出血はありませんでしたか?」などと軽い質問を終え、全身麻酔のマスクを付けられました。そして何と、次に気が付いたときは、もう病室に戻っていました。

この手術は、子宮頸部のがん病巣を円錐状に切り抜くもので、がんの確定診断にもつながる検査も兼ねています。電気メスを使って高熱で焼き切るので出血も少なく、日帰り手術も可能なのです。

以前は、子宮全体を摘出する治療法しかなかったそうですが、「円錐切除術は、費用も安く、妊娠・出産にも影響しない」と説明されていたので、安心して受けることができました。手術の翌日は、もう手術を受けたのかしらと勘違いするほどの元気さで、その後の生活にも何ら影響はありませんでした。

子宮頸がんは、「予防できるがん」とされていますが、そのためにはきちんと定期検診を受け、自分の体の状態を確認しておくことが必要なのです。うかつにも私は、子宮頸がんのことなど考えたこともありませんでした。

検診を受けることで、早期治療が受けられるのですから、多くの女性に知っていただきたいと思います。医療技術の進歩により、円錐切除術が気軽に受けられ、子供を産む選択肢も奪われずにすむのです。

子宮と命をがんから守れたのは、やはりあの日、子宮がん検診を勧められて受けたのがきっかけでした。そのお陰で現在は、がんの不安からすっかり解放され、趣味などにも熱中できる健康な日々を送っています。このような幸せをくださった先生方や先端医療の技術者の皆さんにも心から感謝したいと思います。

【担当医からのひとこと】細胞診や組織診で処置を決定

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頸部の粘膜に感染することによって起こります。このウイルスは性行為によって子宮の中に入ってくるので、コンドームを使用しない女性には感染の可能性があるのです。

しかしHPVに感染したからといって、すぐに変化が現れるわけではありません。子宮頸部の上皮内がんに移行するのに6カ月から数年以上、さらに子宮摘出が必要となる浸潤がんに成長するまでにはさらに数年以上かかります。

年1回の子宮頸がん検診を受けていれば、上皮内がんや子宮頸がんに進行する前の段階での早期発見につなげることができます。だから、コンドームを使わない場合は、定期的に子宮頸がん検診を受けるようにお勧めしています。

子宮頸部の異常が疑われるときは、ふつう細胞診から始めて、HPV検査、コルポスコープで観察しながらの組織診へと進み、これらの結果によって治療方針を決定します。

sarryさんの場合、「HPVハイリスク型/高度異形成/異形成が広範」という3つの条件がそろっていたため、子宮頸部円錐切除の適応と判断しました。また、私は受診者全員に経膣超音波検査を行いますが、卵巣腫瘍などを見落としていないかをチェックするためです。

sarryさんには我々のセンターで円錐切除を日帰りで受けていただきました。(当センターでは、全例日帰り手術。昨年は270例)。術後の病理検査で、病巣が完全に摘出されたことが確認されています。円錐切除をした人に妊娠率の低下や早産のリスクが見られるといわれますが、科学的根拠はありません。

子宮頸がんの細胞診

子宮頸部から採取した細胞を色素で染め、顕微鏡を使って異常細胞の有無をチェックする。細胞の形状が見えやすくなるように専用の液体試薬が用いられる。検査結果はクラスⅠ~Ⅴで示され、Ⅲa(軽度から中等度の異形成の疑い)、Ⅲb(高度の異形成の疑い)、Ⅳ(上皮内がんの疑い)、V(浸潤がんの疑い)などと判定され、これらはすべて精密検査の対象となる。最近は、子宮頸がんの原因ウイルスであるHPV検査と併用されることが多い。

管理人@sarry(さりぃ)

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