これから同じような体験をされるであろう方々に私のケースをお話ししたくてメールしております。私は現在妊娠8ヶ月で、(2008年)1月に出産を控えております。
私は6年前、25歳になった年から一年に一度、婦人科の検診を受けておりました。アメリカに住んでいたこともあり、こちらでは年に一度の検診は女性にとって常識であり、いつも”問題ありません”と言われ続けていました。
ところが、去年の7月、1年ぶりの検診に行った結果、精密検査が必要だと言われ、子宮頸部異形成であることが分かりました。先生の説明では、”Pre-Cancer”癌になる可能性のある細胞があるので、その部分を切り取れば(LEEP)大丈夫、30分ほどで済む手術で局部麻酔、その日には帰れるということでした。日本では前日から入院して、全身麻酔で、、、などとかなり大掛かりなようですが、こちらでは、婦人科の個人病院ですぐに執り行われる手術です。毎年、検診を受けていたのにどうして?という気持ちばかりが強く、かなり動揺しました。引っ越したこともあり、前年とは違う婦人科の先生だったため、どうして今まで見つからなかったのかと聞いてみました。その先生の説明によると、ほとんどの婦人科では綿棒のようなもので、膣の菌を調べるだけが一般的で、この場合、体調によって菌が少なかったりして、発見されないことが多いとのこと。子宮内膜症もひどくなるまで見つかりにくいと言われたりしますし。
一週間後にLEEPの手術を受け、手術自体は正直辛かったですが、(局部麻酔でも感覚はあるので)これで悪いものは全て取れたんだと自分を納得させ、新しい自分になった気分で髪を切ったりして過ごしておりました。
術後一週間経った時、また婦人科に来るように電話があり、私はもう目の前が真っ暗になりました。LEEPで切り取った切り口がすでに癌になっているとのこと。詳しく検査する必要があるということで、婦人科の癌専門の先生を紹介されました。すぐに予約を取り、検査の結果を持ってその先生を訪ねると、”発見が遅れることが多いのに、この段階で見つかってよかったね。できるだけ早く子宮全摘出の手術の予約を大学病院で取って下さい”と言われました。私は結婚したばかりだったこともあり、将来は子供も欲しいので、子宮摘出はなんとかならないんでしょうかと聞いてみました。その先生は”何を言ってるんですが?自分の命と赤ちゃんとどっちが大事なんですか”と。帰り道はどうやって帰ったかも覚えていません。主人に話すと”精密検査もせずに突然子宮摘出を勧めてくる医者なんてあてにならない。他のお医者さんを探そう”と言ってくれ、悲観的な私は、もしかしたらそれしか方法はないのかもしれないと思いながらも、ポジティブな彼に支えられました。
私たちにとっては、子宮温存=妊娠の可能性を残すということが希望だったので、その後、3件ほど違う大学病院の専門の先生を訪ねて、やっと広汎子宮頸部摘出の手術を専門にしている先生に出会えました。日本では4件ほどの病院で手術を受ける事ができるとき聞きました。この手術は簡単に言うと、子宮頸部を切り取り、子宮と膣部を縫い合わせるという手術法です。90年代後半に開発された手術なので、一番最初に私が訪れた先生のように、全く情報がアップデートされてない医者にとっては、”聞いたことはあるけど、どんな手術?”みたいなものなんだと思います。日本でも4件だけでしか行われないということなので、熟知している医者は数えるほどなんだと思います。
さて、この先生はまず、内診、血液検査、そして、MRIの結果から判断して、子宮を残したいと思っている私のような患者にはこの治療方が一番だと診断されました。結果、癌のステージはIa2。Ibの段階まではこの手術で子宮温存ができるというお話でした。とにかく、私たち夫婦への丁寧な対応の仕方、内診の時手際がよく全く痛くない!、看護婦さんたちのテキパキとした仕事ぶりに、この人たちなら信頼できると感じました。医者を選ぶ権利は患者にあるわけですから、自分と”相性が合う”先生を徹底的に探すことがとても大切だとつくづく感じました。念のためにもう一人違う先生に”セカンドオピニオン”として意見を求め、広汎子宮頸部摘出術で大丈夫だと言われたので、最初の先生に手術をお願いしました。
手術は6時間ほどで全身麻酔、リンパに転移していないかが一番の問題なので、まず足の付け根辺りにあるリンパを摘出し、(このため手術後、足がむくみやすくなる可能性があると言われました)転移してないことを確認してから、お腹に4つほど穴をあけてカメラを通し、手術は膣部から行われました。手術は成功でした。リンパに転移はなく、切り取った子宮頸部の切り口もクリーンだったということで、完全に癌は切り取られました。術後に心配された排尿障害も特になく、手術の2日後には退院しました。もちろんアメリカは長く入院させないことが基本なので(待ってる患者がいっぱいだし、保険料もものすごいので、、、)日本のように至れり尽くせりではありませんでしたが、自宅に早く帰れたことは私は嬉しかったです。2週間は仕事を休んで、自宅安静でした。全身麻酔の影響で、術後は鬱になることが時々ありましたが、友達が訪ねてきてくれたり、家族の支えでなんとか乗り切ることができました。
手術から3ヶ月くらい経ってから、もうセックスしてもいいという許可が出て、6ヶ月後には妊娠も可能と言われました。子宮は残っているため、理論的には妊娠が可能だけれど、やはりあるべきものがなくなっているため、ホルモンのバランスなどが崩れ、妊娠しにくいということもあるだろうと言われました。試みてから一年経っても妊娠しない場合は、不妊治療の先生を紹介すると。”一年あるし、大きな手術をしたんだから、気長にいこう。。”と思っていたら、手術から7ヶ月後の今年の5月に妊娠が分かりました。ハイリスクの妊娠だと言われていますが、これまで特に何の問題もなく、妊婦生活を楽しんでいます。出産は帝王切開になります。
これから後4年は、再発しないように綱渡りのような心境ですが、何よりも大切な命を授かれたことが、大きな心の支えです。
子宮がんというと、すぐに摘出というイメージが大きいですが、なくさなくていいものを取り除いてしまって、人生の選択幅を狭めるのは悲しいので,皆さんにも医者に言われたからというのではなく、できるだけ情報収集し自分に合った適切な治療法を選択してほしいと思い、長々と体験談を書かせて頂きました。
【追記:2008/02/04】その後のご報告をいただきましたので追記させていただきます。
私は少し早めの12月28日に、無事元気な男の子を出産し、ただいま育児奮闘中です。幸運にも授かった命ですから、大事に大事に育てていきたいと思います。
管理人@sarry:子宮頸がんの新治療法「広汎子宮頸部摘出手術」については、『子宮頸部異形成のあれこれ~子宮頸がん』に記載しています。日本でも術後自然妊娠での出産例があります!